子育てしながら地域医療を支える 小林さん夫妻 後半~しごと編~
Iターン
【プロフィール】
小林 健太(こばやし けんた)
出身地:島根県(松江市) 職業:診療放射線技師 勤務先:町立奥出雲病院
小林 絵美(こばやし えみ)
出身地:島根県(出雲市) 職業:看護師(認定看護師) 勤務先:町立奥出雲病院
表記形式
小林健太さん:健太さん
小林絵美さん:絵美さん
インタビュアー:記者
奥出雲町にIターンで移住されてきた小林健太さん・絵美さんご夫妻のインタビュー 後半~しごと編~ です!
前半~暮らし編~はこちら
子育てしながら地域医療を支える 小林さん夫妻 前半~暮らし編~
<奥出雲での仕事>
記者:奥出雲でのお仕事について教えてください。実際に奥出雲で働かれてみてどうでしたか?
健太さん:職場でのミスマッチはなかったですね。CT撮影をはじめ、非常に面白い仕事だと感じました。初めて夜間の待機当番になったときは、ものすごい責任感を感じ(検査のときは一人で対応しなければいけないので)、興奮していたことを覚えています(笑)。この仕事は職人気質なところもあるし、撮影画像に関しては、すべての診療科について知識を網羅しないといけないところもあって(例えば整形外科の知識だけではダメ)、医師から意見を求められる場面もあるので、非常にやりがいがあるし、患者さんのために頑張らないとなって思ってます。
記者:どれぐらい奥出雲で働いているのですか
健太さん:入職して18年ぐらいでしょうか
絵美さん:私は20・・・うん年でしょうか(笑)
記者:もうキャリアが長いですけど覚えることはまだたくさんあるのでしょうか?
健太さん:覚えることはきりがないですね。自分も結婚して、子どもができて家庭を持ってから時間が無くなってきていますね。今ある知識だけでも仕事はできますけど、新しい資格を取得するまでの勉強が大事で、新しい知識は刺激になります。最近はオンラインで勉強もできるのでいい時代になりましたし、成長を止めてはいけないとは思っています。
記者:素晴らしい考え方ですね。働きやすさはどうでした?
健太さん:すごく働きやすい職場ですね!みなさんすごく優しいし、病棟などの他の部署のひとたちもすごく優しくしてくれて、職場への不満は特になかったです。
記者:絵美さんはどうでした?
絵美さん:社会人としても初めてで、看護師としても初めてですが、すごく楽しいです!自分は性分的に動いていないと駄目なタイプで、高齢者も好きでしたし、入院する患者層は高齢者が多く、高齢者の方々が元気になっていく姿を見てうれしいし、逆に自分が元気をもらっています。私が新人時代は、教育係以外のスタッフも含めてみんなで指導してもらってやりやすかったので、のびのびやっていました(笑)
記者:新しく覚えることもあるのですか
絵美さん:たくさんありますね。看護師は所属の病棟が変わると、やることが異なります。
記者:マンネリとかはないんですか?
絵美さん:マンネリする暇がないです(笑)。やっと新しいことを覚えてきたなと思ったら部署の配置異動みたいな感じ(笑)。
記者:絵美さんは「認知症」の認定看護師さんと伺いましたが、私は認定看護師という存在を知らなかったです。
絵美さん:認定看護師の歴史は長く、私が高校生の頃からあったのを覚えています。それで認定看護師の取得もしてみたいという気持ちはありました。ただ、認定看護師は費用もかかるし、認定看護師でも分野も非常に多岐にわたる(感染管理、手術室、糖尿病、緩和ケアなど)ので、なかなか決断できなかったんですよね。
記者:なるほど・・・ではなぜ認知症の認定看護師を志されたのですか?
絵美さん:奥出雲の患者層は高齢者が多く、認知症の方が非常に多いんですよね。それまで認知症の患者さんと接してきて、私自身がうまく対応できなくて自分自身モヤモヤしていました。介護患者中心の病棟に配置替えになったときに高齢者の看取り(老衰)についての研修会で、講師から「認知症をひとくくりにしてはいけない」という言葉に感銘を受けて、認知症について強い関心を持つようになりました。それから看護部長から島根県で認知症看護師取得してみないかと提案をいただいき、取得することとなりました。
【備考】認定看護師:ある特定の看護分野において、熟練した看護技術と知識を有する者として、日本看護協会の認定を受けた看護師
記者:内容は難しくなかったですか?
絵美さん:難しいけれど、得た知識とこれまでの業務が一致して腑に落ちることが増えました。
記者:認定看護師を取得する前の自分と後の自分は違うと思いますか?
絵美さん:まったく違うと実感できています。
記者:特にどういったところでしょうか?
絵美さん:広島で現地実習したときに、現地で認定看護師に指導いただくことがあったんですが、これまで得てきた知識と実際の患者さんの反応が一致し、腑に落ちたんです。今までだと認知症の患者さんの反応に疑問が残ることもあったけれど、それが今では理解できるようになりました。
記者:今後はどうしたいのですか
絵美さん:この知識やスキルを同僚や後輩たちに伝えていきたいと思っています!
記者:健太さんは診療放射線技師以外の仕事もあるのですか?
健太さん:職場内のACLS委員会の仕事もしていて、職員の救急救命処置の技術向上をめざして活動をしています。
記者:救急救命って難しそう・・
健太さん:私が子どもの頃には病院の職員って、いわゆる救急救命処置ができて当たり前だと思っていました。ただ、自分が実際に病院職員になってみるとそんなことは無くて、ちゃんと訓練しないと救急救命できないんですよね。自分としては病院全職員が基本的な救命措置(BLS)はできるように啓発活動や訓練をしていかないと、とも思っています。
記者:すごく大事な仕事じゃないですか!
【備考】ACLS:救急救命における心肺蘇生法のことで、二次救命処置ともいわれています
職員への救急救命講習の様子
AEDの使い方説明の様子
記者:絵美さんは認知症の認定看護師とのことですが、実際にはどういうことをされているのですか?
絵美さん:私は認知症の患者さんが元気になって退院してもらうのが一番だと思ってます。そのために院内カンファレンスや、院内デイ活動などをしています。
記者:それはどういったことが目的なんですか?
絵美さん:入院患者さんはベッド中心の生活ってイメージがある方が多いんですけど、でもそれだと元気になるのに時間がかかり退院に結びつかないと思うんです。ベッドから起きて活動してもらう為に院内デイ活動をしています。それはせん妄予防にも繋がります。
記者:院内デイ活動って何ですか?
絵美さん:夜間の不眠で困っている患者さんや離床を望んでいる患者さんを対象に、軽い運動をしたり茶話会をおこなったりして、昼間にベッドから一時的に出てもらってます。他にも奥出雲町内で出前講座もしていますね。
記者:出前講座っていうのは?
絵美さん:奥出雲町内で認知症に困っている患者さんやそのご家族さんに向けて認知症の知識や対応方法をお話させてもらってます。
絵美さん:よく認知症の方を違う人間の様に思われる方がいるんですけど、認知症の方だって不安に思ったり、困ったり同じように感情のある人間なんですよね。そこを勘違いされている方が多い。そういった偏見をもっと無くしていきたいですね。
記者:そうなんですね。上司や職場のスタッフの理解はあるのですか
絵美さん:上司や周りのスタッフもすごく理解があって、配慮してもらえてます。
記者:将来こうしていきたいという目標はあるのですか?
絵美さん:個人の目標は、外来で「認知症相談コーナー」を設けたいと思っています。
記者:それは認知症患者の家族さん向けということですか?
絵美さん:「認知症患者さん本人向け」です。家族さんはたくさん言いたいことはあると思うんですけど、本人の困りごとを解決すると結果的に家族全体の悩みも解決するのではないかと考えています。患者さん本人の困りごとを解決しながら、認知症に対する偏見も解消していきたいなと思っています。今後、高齢者の多い奥出雲町ではもっと認知症の患者さんは増えてくると思いますので、もっと啓発活動をしていきたいですね。
院内デイ活動の様子
認知症出前講座の様子
<~奥出雲ライフを振り返って~>
記者:奥出雲町のここが好きっていう所はありますか?
健太さん:自然が豊かでさまざまな遊びができますよね。
絵美さん:優しい人ばかりでずっと奥出雲町にいたいと思うし、そういった人たちのために頑張っていきたいとも思います。
健太さん:同じ自治会の人など地区のイベントなど色々優しくしてくれて、いやな思いはしたことないですね。
絵美さん:母親として子育てが初めてですごく不安だったのですが、奥出雲町や本当にいろいろな人たちに支えてもらったので、育児も仕事も両立しながらここまでこれたなあと思いますね。
健太さん:たしかに奥出雲町は田舎だけど、出雲市や松江市に行こうと思えば車で1時間程度で行けるし、必要な物は手に入るし、ちょうど良い距離感ですよね。
記者:奥出雲生活を満喫されているようですが、就職してから今の状況になると思っていましたか?
健太さん:まさか自分が奥出雲町に家を建てるなんてみじんにも思っていなかったですね(笑)。でもすごく充実していると実感してます。若かりし頃は大病院でバリバリ勤務しようかなとか考えていたこともあったけど、結婚してから180度考え方が変わりましたね。自分はこの病院で最大限出来ることをやって、奥出雲町での生活をゆったり過ごして(仕事が終わって庭でたき火をして過ごしてみたり)これが俺の人生だなって思えるようになりました。
絵美さん:日々目の前のことを全力で対応してきて、気づいたら今ここにたどり着いたなって思います(笑)。健太さんが言うように大きな病院じゃ無くて、この田舎の病院だったからこそ、のびのびやりたいこともできたし、優しい仲間達に囲まれてすごく環境に恵まれたなと思います。仕事も趣味も楽しいし、非常に充実しています。
記者:職員さん同士の交流会とかあるんですか?
健太さん:職場にマラソンサークルがあって、10年前ぐらいから職場の仲間たちとマラソンをするようになりましたね。それまではマラソンなんてとんでもないって感じでしたけど、気付いたらはまってましたね(笑)
記者:すごいパワフルですねー! 絵美さんもマラソンされるのですか?
絵美さん:そうですね!健太さんの影響で私も始めましたね。学生時代は文化系の部活だったので運動が得意ではないんですけど(笑)
記者:すごい!夫婦そろってタフですねー
健太さん:奥出雲町で開催された「おろちループグルメマラソン」に職場の仲間たちと参加しましたんですけど、チーム一丸となって男女混合の部で入賞することができました!
記者:すごいですね!!
絵美さん:最近では職場のマラソンサークルの仲間たちと「松江城国宝マラソン」にも参加して夫婦でフルマラソンも完走しましたよ(笑)
健太さん:職場の仲間達と所属部署や年齢などの垣根を越えて、同じ話題で楽しめるし、同じ目標を共有することができ、職員の団結力が上がったと思います。
記者:本当にすごいですね! お二人の将来の夢とかあるのですか?
健太さん&絵美さん:夫婦でホノルルマラソンを完走するのが夢ですね(笑)
記者:素晴らしい夢ですね!今後の活躍をお祈りしております。
小林夫妻、ありがとうございました!
【町立奥出雲病院からのメッセージ】
町立奥出雲病院では看護師を募集しています。
UターンやIターンなど都会からの移住も大歓迎です。
気軽なご相談、お待ちしております!
〒699-1511 島根県仁多郡奥出雲町三成1622-1
町立奥出雲病院 病院総務課 TEL:0854-54-1122